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顧客ロイヤリティ指標NPS(ネット・プロモーター・スコア)の運用方法とよくある間違い



NPS(ネット・プロモーター・スコア)をご存知でしょうか?NPSは顧客のロイヤルティを把握するための指標の一つです。そのNPSが近年、世界で急速に広まっており、日本でもこの指標を用いるケースや検討される企業が急増しています。今回は急速に導入が進むNPSについての運用方法と、陥りやすい落とし穴を紹介します。 

NPSとはなにか



冒頭の説明にもあるとおり、顧客ロイヤリティを把握するための指標の一つです。
顧客ロイヤリティを0~10のスコアで『推奨者』『中立者』『批判者』の三分類に分け、推奨者が批判者よりも多ければNPS数値はプラスになり、逆に批判者が推奨者よりも多ければマイナスになる、といった様に、簡単に運用できるロジックである点が特徴的であり、急速に導入が進んでいる背景でもあります。

※以下の図参照


また、よくある勘違いとしてNPSの“N=net”をインターネットのことだと思われてしまうことが多いのですが、『正味』の意味であり、インターネットとは無関係です。

 

NPSが活用されるシーンとは?



NPSの活用自体はBtoCやBtoBを問わず、広く導入が進んでいます。共通していえる活用シーンとしては『顧客との接点があるシーン』が挙げられますが、もう少し特定シーンにフォーカスすると、
1.『購入行動に直接的に関わるシーン』
2.『購入後に使用・利用したシーン』
3.『ブランドがどのような認知なのか』という顧客ロイヤリティの指標として用いられます。

 

よくある間違い『自社顧客への調査なのか?』『リサーチ会社のパネラー向け調査なのか?』



NPS指標を活用する際、『どのような目的で実施するのか』、その目的を明確にせずに顧客分類が曖昧なまま実施されるケースが見受けられます。この場合、目的に対して十分な調査結果が得られないことが考えられます。

たとえば『世間一般に対するブランドイメージ』を調査したいのであれば、既存取引顧客DBから抽出したリスト宛に調査することは、最初から偏りがあります。この場合は外部の調査会社のパネラーを使うなど、自社と直接コンタクト経験のある対象に偏らない手段を用いるべきです。

また、自社製品に関する満足度合いを計測するのであれば、使用後の調査だけでは不十分であることが考えられます。なぜなら、使用後の評価のみでは、使用前にどのような評価だったかが分からないため、『使用(体験)』という行動を起こしたことによる『態度変容』は読み取れません。
定期的に満足度調査を実施する場合でも同じです。定期調査で読み取れるのは『製品評価の変化』や『サービス評価の変化』であって、使用(体験)前の『事前期待値に対するギャップ』を導きだすものではないからです。それぞれ、どのような活用が自社の現状にとってマッチするのかを十分に考えた上で導入しなければ、NPS指標自体が改善に向けて役割を果たさない結果になりかねないため、注意が必要です。

 

米国から持ってきた指標の考えが、そのまま日本で通用するわけではない。



米国の調査では、一般的に『推奨者』と『批判者』に分かれるケースが多く、『中立者』になる傾向は少ないと言われています。それに対し日本はこれまでのアンケート手法でも『満足』とするケースが少ない傾向にあり、一般的には『推奨者』が登場しにくい土壌であると考えられます。また、日本国内ではNPS事例が豊富といえる土壌ができていないため、海外・グローバルで比較する際には注意が必要です。

実際に米国とは違ったNPSの運用をしている地域があります。その地域とは欧州です。

欧州の高校ではテスト結果を0-10で等級分けしており、多くの学生は10を獲得する経験をしません。そのため、10に対しての評価が他の地域よりも特別な存在となっており、10をつけるケースが少ないと言われています。これは米国と欧州の文化の違いが根深いために発生したケースと言えるでしょう。



 

NPSを応用してWEBコンテンツによる態度変容を指標化



弊社では上記で説明したような方法の他、企業のWEBサイトにおける特定カテゴリコンテンツが、来訪者にどのような態度変容を与えているのかを調査した事例がありますので、ご紹介します。※一部、実績ページにも掲載しています。

ある高関与商材を扱うメーカーの事例ですが、ブランドイメージについての調査を特定カテゴリへの来訪の前後でNPS調査を実施し、ブランドイメージの改善に寄与できているのか判定を行いました。

自社だけを対象にしても『態度変容の大きさ』の尺度がないため、他社メーカー数社の同一カテゴリのコンテンツも閲覧してもらい、その中でのブランドイメージの改善度合いを比較しました。また、高関与商材の場合、ターゲットにも商品へのリテラシーの違いが出るため、リテラシーレベルを3段階にわけ、それぞれの段階に該当するパネラーに向けて、同一の調査を実施しました。

その結果、業界の中で一番有名な企業は、事前イメージに対しブランド理解を進めるコンテンツが不十分だったため、スコアを大きく下げる結果になり、その他の企業は保有するテクノロジーの理解がトップ企業に比べて大きく浸透していなかったこと、そして、コンテンツが充実していたことが重なり、軒並みスコアを改善する結果になりました。

世代別に分けた場合、世代で象徴的なブランドが異なると、ばらつく要因にもなります。今回は趣向性の高い商材でもあったため、NPSスコアの評価も個別にみると両極端になる結果もありました。

このように、特定カテゴリのコンテンツが意図する成果を生み出しているのか、前後のNPS調査による態度変容、そして他社との比較を行うことで様々な示唆を得ることができます。

 

最後に



NPSの導入は実施して終わりではなく、把握できた時からがスタートです。NPS調査では顧客の生の反応、そして定性調査も交えれば生の声も聴くことができます。その反応や声は、直接顧客と対話する部門にとっては有益な情報です。経営指標として用いるだけではなく、現場のPDCAを回すための重要な指標として活用されてこそ、NPSの導入価値はあるのかもしれません。

また、結果を収集・分析しフィードバックするタイミングも重要です。「時間が経過してしまったことで、生の声がリアリティを失ってしまう」という状態が発生するからです。まずは『生の声はそのまま届ける』という鮮度にこだわったエスカレーションを実施できるよう、NPS導入の運用設計時は、事前に各部門との調整を行っておくことをお薦めします。

ぜひ、手法ではなくイシューに注目した運用を。




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